「ハル」

 深夜に部屋で寛いでいたハルを呼ぶ声があった。
 ハルは振り返ることなく、どしたの?と軽い返事をする。

 「よかったのか、これで」

 声から滲み出る重々しさをものともせずに、からからと笑ってハルは頷いた。

 「いーのいーの。壊れた世界は戻らないんだし、よその世界にいくのもなんかビミョーってか」

 「それならここで生きていくのがザントーっていうか?」

 「だから、ここに残る、で、FA(ファイナルアンサー)」

 「うん。大丈夫っしょ」

 そうか、そうだな、ともう一つの声の主は同じ明るさの声を返す。

 「そ。今度はみんながいる」

 「つかやっぱまだ死にたくなかったしさぁ」

 「……それに、今度はうまくやると思うんだよね、キリンちゃん」

 「ヴェスナーちゃんとの契約のおかげで、もう一回キリンちゃんの世界で生きられるんだから」

 「幸せもんだよ、ウチは」

 そうか、そうだな、ともう一つの声の主は同じ言葉を返した。

 そして、それで。

 その声を最後に外ツ神の気配は本当になくなって、この世界もまた新たな日々を紡ぎ始める。

 ――帰る場所のなかった、たくさんの命と共に。






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